低電圧電源
(定電圧安定化電源)

SQ雑記帳
部品サブプロジェクト


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サブプロジェクトについて

はじめに

本サブプロジェクトは、低電圧の定電圧電源プリント基板を設計・製作します。
本プリント基板は部品として各プロジェクトで利用します。

背景・目的

静電型ヘッドホン用アンプの低電圧回路、および、 プリアンプ・ヘッドホンアンプ用途向けに定電圧電源(低電圧の定電圧安定化電源)を設計します。 大半は ±12V で必要十分ですが、高電圧アンプ入力段には ±18V が望ましいです。
一般的なシリーズレギュレータIC(3端子レギュレータ)を使いますが、 本サブプロジェクトでは何か一工夫することを目標として盛り込みます。

(ユニバーサル基板ではない)正負定電圧電源回路のプリント基板を設計するのも初めてであり、 部品配置・基板デザインなど実際に作ってみて経験を積むという目的もあります。 簡単な回路でもあっても実際に作ってみると発見は多いです。

設計データ配布

プリント基板のガーバーデータ、詳細部品リストなどの製造資料について公開を予定しています。
お待ちください。

留意点

  • 単に±12Vということであれば、固定電圧の3端子レギュレータ 7812 / 7912 等を使うのが簡単です。
  • 電源性能評価は行っていないので効果のほどは分かっておりません。 このような妙な電源回路を作らなくても問題は無いと思います。
  • プリアンプなどあまり電力(電流)を必要としない回路向けの電源です。 もし1.5A 以上必要であれば別の電源回路を設計する必要があります。

工具について

別ページ「工具について」にまとめました。

コンポーネント:SSDRV PowerSupply2 v1 (LM317/LM337正負定電圧電源 v1)

概要

『 SSDRV PowerSupply2 』は出力電圧 ±12V~±18V を想定した電源回路です。
作業時期は詳細設計開始 2023年1月、プリント基板発注 2023年3月末、音出し 2023年5月です。

出力電圧を調整できるように3端子レギュレータ LM317/LM337 を使った電源回路とします。
また事例や技術情報を探しまして、 Tracking Preregulator という2段レギュレータ方式を採用しています。

写真

低電圧電源 SSDRV PowerSupply2 全体の写真です。

写真:左、整流・平滑・定電圧電源を1枚の基盤に押し込んでいます。 消費電力が少なければ基板で放熱させますが、多い場合はヒートシンクを取り付ける必要があります。 なおショートしないようにシリコンラバーシートや樹脂絶縁ワッシャー(絶縁ブッシュ)が必要です。
写真:右、電圧可変なので負荷抵抗を繋いでテスターで計測しつつ電圧調整します。
  写真 SSDRV PowerSupply2  

回路図

  回路図 LM317 LM337 Dual-Tracking Regulator 定電圧電源

回路検討: LM317/LM337 データシートにある回路

TI(旧NS)LM317 データシート詳しくみると Tracking Preregulator という 2段レギュレータ構成の回路例があり、整流におけるリップル圧縮率を高めているようです。 なおデータシートでは抵抗720Ωとなっているのですが、ダイオード(発光ダイオード)で置き換えるネット上の改善例を元に回路構成しました。
また LM337 データシートにも記載がある正負電源回路としています。

  LM317 Dual-Tracking Regulator   LM317 LM337 Adjustable Power Supply

基板デザイン

プリント基板は2層(表・裏)です。プリアンプ等のあまり電力(電流)が必要とならない回路での利用想定ということもあり、 整流平滑回路も同じ基板に乗せています。
   

調整方法、計測・テスト

次の段取りで実施しました。

  • 通電させていない基板の状態で、テスタを使ってプラス・マイナス・GNDなどの抵抗値を計ってショートしていないか確認します。
  • 接続図のように電源を仮組します。
  • 調整VRは最小抵抗値にしておきます。瞬間的に電源オンして発煙などないか、次に正負の電圧が正しく出力されているかを確認します。
  • 調整VR回して目的の電圧に設定します。調整時には負荷抵抗(セメント抵抗)を繋いで行います。
  • オシロスコープで各ポイントの電圧波形を確認します。

電源の接続図です。動作確認用に仮組します。
 
負荷抵抗を繋いだ状態で計測・調整します。
 

詳細確認として電源電圧をオシロスコープで計測します。
波形:左上では発振を確認しました(黄色は正電圧、水色は反転した負電圧)。
今回、出力電圧は低負荷では問題無かったのですが、 よくよく確認を進めるとLM337の1段目と2段目の間で発振していまして回路定数見直しが必要となりました。 コンデンサC142の値を見直すと波形:左下のようになりました。
波形:右では電源オンからの電圧変動を確認しています。問題なさそうです。
   

設計補足、部品留意点、製造留意点

  • 平滑コンデンサには 低ESRの電解コンデンサ を複数個並べることを想定しています。 残留リップルを5%以下に下げるとすると計算すると静電容量がそこそこ必要なのこともあり、 (通常の)液体電解質のラジアルリードの大容量品とします。
    個人的に低ESRの電解コンデンサ(スイッチング電源向け低インピーダンス品)を複数並列接続した電源を好んで使っています。 自立型の大型ブロックコンデンサ x2個(正負)とかと比べると、(複数並列式は)音の反応が良い電源に仕上る傾向があると思っています。 とはいえ電解コンの製品シリーズ・メーカーにより、大人しい音だったり、ハイやローに癖のある音だったり、 自分が求める良い音にたどり着くのは正直難しいです。 その辺りはネット上の評判で目星つけておき、実際に使って評価するしかないと思っています。
  • 電解コンデンサ容量はリップル率が3%以下となるように検討しまして、今回設計のプリアンプ回路への供給用途であれば1200uF以上と算出しました。 リップル率 1% だと3700uFなのでこれ以上大容量にする必要はなさそうです。
    ただ小規模パワーアンプ用途だと10000uF必要になるかもしれませんが、LM317/LM337単発だと1.5Aが上限なので厳しいと思います。
  • 整流用ダイオードには SiC-SBD を採用していますが、一般のFRD・SBDでも問題ありません。
  • LM337については定数間違えると簡単に発振してしまうので要注意です(回路図 C142を1uFとかにすると発振します)。 これらは製品データシートにも記載があります。 レギュレータ近くのコンデンサは一般品にしますが、今回はオーディオ向けの低ESRではないものを選定しました (適当な値や、超低ESR品を使うと発振することがあります)。
    なおLM337の Tracking Preregulator については他社セカンドソース品含めてデータシートでは見かけていません。 採用例が無いのはもしかしたら理由があるのかもしれません。十分な計測・評価が必要だと思われます。
  • 放熱はプリント基板を使っており、500mA未満での利用を想定しています。 1Aとか流す場合はヒートシンクが必要だと思いますし、電解コンデンサの容量も大きいものが必要となります。
  • 2段目にある抵抗とダイオードについて、R114とD111~D114、および、R124とD121~D124は何れか択一です。推奨はダイオード利用です。
  • 別途、センタータップがあるトランス、電源スイッチ、電源インレット、ヒューズ などが必要です。 なおトランス電圧は電圧降下を見越して+10V 位必要です。

感想・反省点・今後の課題

シンプルだけど一工夫ある回路としましたが、効果のほどは良く分かっていません。2段レギュレータは電圧降下が大きいデメリットもあります。
電源回路はヘッドホンアンプやプリアンプでは音質を決める重要な土台でもあり、 性能評価して、必要があれば再設計したいと考えています。 その時は抜本的に回路を見直す予定ですが、2段レギュレータ構成だけは踏襲したいと考えています。

【参考】全ての平滑コンデンサを固体電解コンデンサとする案

整流後の平滑コンデンサを オール固体電解コンデンサ とすると費用がかかりますが、 異様に透明感のある出音になったりすることもあり凄かった印象があります。 (バクーンプロダクツ社 のごく一部の製品もそのようなモデルがありました)
とはいえ電源オンの時の突入電流の対策、定電圧電源回路を発振させないようにする回路構成とするような配慮も必要になります。 今だと 16V 2400uF ~ 25V 1200uF ~ 35V 680uF の 大容量ポリマー電解コンデンサ などもあるので、 正負で各5~10個(計10~20個)使うとプリアンプ・ヘッドホンアンプ用途ならコストを抑えて作れるとは思います。

写真左はかなり昔に作った SANYO OS-CON 16SA1000 を並べたもの(ブリーダー抵抗使用で耐圧32V化)。 TCNQ錯塩 の 旧型OS-CON はディスコンになってしまいましたが、コレの出音は個人的には好みでした。 写真右に OMRON印 のリレーがありますが数秒遅延オンして突入電流を抑制しています。
当時は回路設計も実装もまったくダメで全然生かせてなかったと今だと分かります。 これも最新部品と技術を用いて再度チャレンジしたいと思っています。
  オール OS-CON 平滑コンデンサ電源回路  

コンポーネント:SSDRV PowerSupply2 v2 ULNR (LT3042/LT3093 2段低ノイズ・正負定電圧電源 v2)

概要

インターネットを探すと電源回路の作成事例は多々ありますが、 仮にネットの回路事例を真似をしても性能比較することは高い技術力が要求されることもあり、自分ではより良いものを選び出すことは困難だと実感しています。
素人の自分が高性能な電源を作り出そうとしたら試行錯誤するよりも高性能電源ICを使うほうが確実だと思っています。 ならば高性能で評価されている LT3042 / LT3093 を使った電源回路を検討することとしました。
   

超ローノイズとすること、その上で多用途で使えることを目的としつつ設計します。5種類の基板を組み合わせて使います。

詳細説明は記載中です。

写真

写真:左は後段レギュレータLT3042/LT3093子基板の裏面・表面です。プリアンプ基板に直結できるよう出力3ピンFANコネクタが下面についています。 上面は入力3ピンコネクタがあるので、既存の電源配線の間に挿入することができます。
写真:右は実際にアンプ基板に取り付けた例です。コネクタの高さがあるので既存コンデンサも概ね問題ありませんが、 基板サイズがあるので周辺部品に当たらないように留意が要ります(設計考慮済)。
  写真   写真

写真:左は整流・平滑の回路です。 ショットキーバリアダイオード(SiC-SBD)で整流して、固体電解コンデンサで平滑しています。 導電性ポリマータイプなので通常の液体の電解液タイプの電解コンデンサとは出音が異なります。 これはプリアンプ用途なのでコンデンサ容量もそこまで大きくする必要がないので個数・1個毎の容量も少なめにしています。
写真:右は前段レギュレータ回路です。可変タイプのLM317/LM337を使っています。 放熱効果を上げるスルーホールが大量に空いていますが、実は基板都合で面積があまっただけで発熱はほぼありません。
  写真   写真
写真は整流平滑と前段レギュレータをピンソケットで繋いで2枚重ねています。 実装面積節約と廉価プリント基板製造 10×10cm 制限を考慮すると重ねる方向にしてしまいがちです。
  写真

回路図

後段レギュレータ( LT3042 / LT3093 )
  回路図

整流・平滑 ( 左:固体電解コンデンサ用、右:(液体)低ESR電解コンデンサ用)
  回路図   回路図

前段レギュレータ ( 左:LM317/LM337可変、右:78xx/79xx固定 )
  回路図   回路図

回路検討:レギュレータICの配置

高性能電源IC LT3042 / LT3093 の性能を引き出して音質恩恵を受けるにはどうするとよいのか?
ネットを検索するとパラレルにすることでローノイズ性能を高めることができる!というのがチラホラ見つかりました。 そこで当初は図の上段構成のようなものを検討しました。

実際にプリント基板をデザインするとき、LT3042/LT3093のデータシートを隅々まで読み込むとPCBレイアウト例と注記が細かく記載されていることに気付きました。 ピン OUT / OUTS / SET / GND に関する注意は細かいし、 出力の表面実装コンデンサを4か所のパッド分けてハンダ付けさせるというのは個人的に異様なものでした。 こんなにレイアウトに注意がいるということは特にOUTS(ケルビン検出接続)が超重要だということ。 図の上段構成だとアンプ回路から電源配線で電源ICが離れており、負荷変動にキッチリ追従できないのではと思いました。
その対策として考えたのが図の下段構成でして、アンプ回路にソケットで電源IC直結して負荷変動に追従しやすくさせるとともに、 各チャンネルの負荷変動について相互に影響を与えることを抑えるようにしたものです。 最良はアンプ回路内にLT3042/LT3093を配置することかもしれませんが、ソケット子基板にすることで他に流用することができます。高価な部品ですし。

  回路図

基板デザイン

後段レギュレータ( LT3042 / LT3093 )
   

整流・平滑 ( 左:固体電解コンデンサ用、右:(液体)低ESR電解コンデンサ用)
       

前段レギュレータ ( 左:LM317/LM337可変、右:78xx/79xx固定 )
       

設計補足、部品留意点、製造留意点

詳細説明は記載中です。

  • 2段レギュレータ構成、チャンネル毎構成
  • LT3042/LT3093プリント基板のデザイン、負荷の直近配置