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本サブプロジェクトは、バッファ・アンプ回路を設計・製作します。電圧利得1・無帰還の回路です(ユニティ・ゲインのオープンループ)。
本プリント基板は部品として各プロジェクトで利用します。
ハイブリッドIC ( SATRI-IC )を使用する SATRI V4回路 では、入力する電圧信号を電流信号に変換する必要があります。 バッファアンプを使うことでどのような音の入力ソース(機器)にも対応できるよう入力インピーダンス設定抵抗を大きくとる事ができ、 かつ、ハイブリッドICに供給する電流信号も大きくすることができます。 これらは低雑音化による音質向上につながります。 (※使い方として、電圧電流変換抵抗(VI抵抗)を小さくして信号電流を大きくすることも可能となる)
以前であれば入力バッファには定番の 東芝製の 低雑音JFET である 2SJ74 / 2SK170 コンプリメンタリペアの
ソースフォロア回路にて手軽に高音質にすることが出来ました。
現状は国内メーカー半導体の JFETスルーホール品 はほぼ無くなってしまい、
表面実装でも コンプリ品種 は皆無なうえ更にPch品種自体もかなり少なく、
僅かにある品種も市場在庫ではIdssランクが揃わない状況だと認識しています。
となると海外製品の表面実装タイプでなんとか構成する必要があります。
表面実装部品では作るのが大変という印象もあるかもしれませんが、
小さな部品を最短距離で高密度実装することができます。
(スルーホール品の)リードが無い分、寄生インダクタンス・抵抗成分を比較的抑える事ができ、
設計次第では周波数特性向上あるいは安定度向上の可能性もありそうです。
本サブプロジェクトでは、より 高精度・低雑音なバッファ部品 を作ることを目的とします。
プリント基板のガーバーデータ、詳細部品リストなどの製造資料について公開を予定しています。
お待ちください。
本サブプロジェクトのバッファ回路は、バクーンプロダクツ社のバッファIC「HBFBC」のピン互換を想定しています。
HBFBC は、HyBrid FET input Buffer Circuit の略とのこと。
スルーホール低雑音コンプリメンタリJFET の枯渇への対処、信号精度向上など複数の目的を満たすために設計されたと想像しています。
この JFET+BJT ですが、「続トランジスタ回路の設計(CQ出版)」の
混成ダーリントン(異種ダーリントン) という回路例で個人的に見覚えがありました。
別ページ「工具について」にまとめました。
『 HBC 』はバッファ基板です。プリアンプ基板にて必要となる部品です。
作業時期は、設計着手 2022年10月 、音出し 2022年12月 です。
JFET入力・BJT出力 ということで「異種=ハイブリッド」なバッファ回路となっています。
人生初のプリント基板設計として選定したのが本コンポーネント基板です。簡単な回路ですがかなり時間を要しました。
HBFBCピン互換(フットプリント互換)、および、半導体回路の構成も恐らく踏襲しています。
本家のHBFBCは4個のトランジスタ(シングル2個、デュアル1個)のようですが、FET入力でHybridというのならJFETx2、BJTx2 と想定されます。
CQ出版社「続トランジスタ回路の設計」の混成ダーリントンあたりを回路想定して LTspice 回路シミュレーションで色々確認すると、
コンプリメンタリ JFETソースフォロア よりも良い結果が得られたことからそのまま基板作成することとしました。
HBC 全体の写真です。
表面実装トランジスタを載せ、細ピンヘッダーを付けています。簡単に抜き差しできます。
表面実装のハンダ付け経験は多くないこともあり、トランジスタ4個なのに、最初は作るのに苦労しました。
JFETでは大抵は大丈夫だと思いますが、Pchのソース・ドレインを逆に使っています。
パターン単純化するためだったとはいえ、(逆の利用については)半導体メーカーは特性保証していないので非推奨となります。反省点です。
(モジュールを刺し込む)親基板用のフットプリントは逆差し防止もあって9ピンが正しいですが、
モジュール子基板は10ピンでも作れるようにしています。なおピンは2.54mmピッチとなっていて扱いやすいです。
なお VccJ± と VccB± は実際には同じ電源を供給しますが、モジュール内では分離してデザインします。
国産JFET もわずかに現行品もありますが、製造終了品の在庫なども探せばあるかもしれませんが、
ランクが揃ったPch・Nchは購入できないと思われます。
海外JFET も コンプリメンタリペア として売っているわけでは無いので、
同一メーカーのNch・Pch JFETをかなり大目に購入して、
Idss選別して組み合わせる必要があります。
日本製JFET だと例えば Idss は GR/BL/V とかランク分けされているものもありますが、海外製だと型番が違って用意されていることがあります。
何種類か購入しましたが、Idssは2mA~30mA位でバラついててペア組み合わせるのが相当難しい状況でした。
なお多少の Pch・Nch 特性差異については調整・吸収できるプリアンプ回路構成となっており実用上は一応問題ありません。
BJTについては国産メーカーも現行品のコンプリメンタリ品が数種類あります。 低雑音品あるいは音の好みなどで選ぶことができます。
バッファ基板ということで正負電源と抵抗繋げばゲイン1倍のアンプとして一応使えます。
最小構成の使い方としては、正負電源(±12Vなど)、入力インピーダンスを決める高抵抗R1、発振防止のゲート抵抗R2、エミッタ抵抗 RV3、
および、バッファ直近に低ESRな固体電解コンデンサを配置します。
下記の動作確認の回路例では、エミッタフォロワのエミッタ抵抗は可変抵抗としていますがテストで信号計測するだけなら固定抵抗でも問題ありません。
ブレッドボード上に構成してサイン波を入力して出力信号をオシロスコープで計測します。
なお写真では数種類作ったバッファモジュールの出音傾向が知りたくてイヤホンを駆動させています。
実際、使用したJFETのメーカーや製品の違いで結構出音が違っていました。
例えば同じ海外半導体メーカーのJFETでもIdssは数倍の開きがあり、
Idssが大きい品種は躍動的に前に出てきて情報量が多目に感じたり、音に表現力や艶を感じたりしました。単純な回路ゆえに半導体素子の影響を受けやすそうです。
詳細確認としては、サイン波を入力してオシロスコープで計測します。
正常波形であるか、発振していないかなどを順次確認します。
テスト入力信号のサイン波の発生にはPC用の信号発生ソフトを使っています(後述)。
人生初のプリント基板設計であり課題も後から多数見つかりました。 ああすればよかったと後悔することばかりです。 ただピン互換にしていたことで本モジュールのみのアップグレードが可能となっています。何度も設計見直しが出来るようにしていたのは大正解でした。
Pch・Nch JFET の特性近づけることも相当困難で、プリアンプ基板に用意してあるオフセット調整の可変抵抗も大きく補正する必要がありました。 (プリアンプ基板でのボリューム変更時にDCサーボが切れたときに)出力のオフセット電圧も出易くもなります。 音の精度含めてまだまだ改善課題が複数あると認識しました。
とりあえずは合格点の音が出ました。
音は使用するJFET品種やメーカー、Idss値で結構印象が変わりました。
トランジスタを変えて数種作ってみて比較試聴して、元気で音が前に出てくる組合せのものを採用しました。
『 HBD 』は前製作 HBC から大幅改善を行ったバッファ基板です。
作業時期は、設計着手 2023年10月 、音出し 2023年12月 です。
JFET入力・BJT出力 ということで「異種=ハイブリッド」なバッファ回路となっています。
プリアンプ基板にて必要となる部品で、HBC(HBFBC) ピン互換になっています。
最初に作成した HBC では、手に入る現行品の表面実装 JFET はかなり限られており、 選別してもPch・Nchの特性を近づけることが難しくもあり、 (プリアンプ基板の)オフセット調整用可変抵抗で無理やり差異を抑え込んでいました。音質面・精度面でも改善したい点でした。
ここで TI社 の BurrBrown ブランドで超低雑音・超高性能ローノイズJFET JFE2140(デュアル)、
JFE150(シングル)がありました。ものすごい性能です。
是非使ってみたいと考えていたものの Pch JFET は発売されなさそうでした。
更に技術情報を色々調べていると TI社 の 計測機用バッファ BUF802 というものがあることが分かりました。
耐圧不足で当プロジェクト用に直接利用することはできませんでしたが、
データシートの等価回路を参考にして新たな入力バッファを検討することとしました。
これらとこれまでのノウハウを組み合わせると、JFET入力・BJT出力の高精度バッファ回路 を編み出すことが出来ました。 思い描いていた 高精度ハイブリッドバッファ を実現することが出来そうです。
HBD 全体の写真です。
HBDでは 小型デュアルトランジスタ SOT363-6 サイズが表面裏面の合計で9個も乗っていて製造するのも超大変でした。
新旧バッファの比較です。
左:HBC、右:HBDはピンは全く同じ配置ですが、HBDでは部品を載せるために基板サイズは結構縦長になってしまいました。
電流源を構成する カレントミラーもLTspiceシミュレーション で色々比較検討して詰めています。
カレントミラー最小構成 はトランジスタ2個ですが、トランジスタ4個あれば「1: 高精度ウイルソン型 」を構成できます。
その他にも色々検討できます。
上記回路図のカレントミラーは複雑な構成になっています。回路的には「2: 高精度ウイルソン + ベース電流補償型 」となっていて、 下側は更に1入力2出力タイプです。
カレントミラー回路のアイデア別に、横軸に入力信号周波数、縦軸に LTspiceシミュレーション結果 の 歪み率 をグラフプロットして比較検討しました。
それぞれの詳細は割愛しますが、「2段v9L」が今回採用した回路案のグラフでして高い周波数まで精度維持しています。
プリント基板は2層(表・裏)です。
フットプリントはもともとピン9本ですが、未使用を追加GNDとして用意しました。逆差し防止で1本削ってもいいし、
使用してGND強化してもいいし、どちらでも出来るようにしました。
あと JFE2140 のデータシート にはプリント基板のパターン留意事項が記載されています。音質追求のため可能な範囲で指示を取り込むようにしました。
調整用の可変抵抗に大きいものを使っていますが、精緻な電流調整が必要なので多回転の縦型が不可欠でした。
あと3Dでは余裕があるように思えたのですが、実際に製作するときは素子間の隙間が狭くて苦労しました。反省点は多かったです。
本回路のプリント基板デザインでは、手作業で一から引くととても配線しきれず早々に断念しました。
代替案として、部品を適当に配置をかえつつ自動配線をおこないそれを複数回試行する方法としました。
色々自動で作らせてみて良いものを位置微調整して再度自動配線ということで煮詰めていき、最後には手作業で改めて配線清書しました。
前製作 HBCと同様に動確用ブレッドボードを用意するか、あるいはテスト基板を用意したうえで調整を行います。
オシロスコープにて順次計測を行っていきます。
1KHzのサイン波が正常に出力だったとしても、小信号だと高い周波数での発振観測されたりすることもあるので
波形:左のように色々信号を入れて確認します。
なお波形:左下は高い成分が乗っているようにも感じますが、
近くのLED電灯ノイズだったり、ACアダプタ(スイッチング電源)のノイズだったり、
プローブ引き回し由来だったり、素人計測では色々拾ってしまうようです。難しいですね。
波形:右はハンダ付け不良により水色側に異常なオフセット電圧が乗っています。
(入力をGNDに繋いで入力0Vとして)入力信号切ると分かります。ハンダ付けミスを探して修正しました。
テスト入力信号のサイン波の発生にはPC用の信号発生ソフトを使っています。efuさん作の WaveGene というソフトなのですが、
現在はweb archiveでのみ辛うじてダウンロード可能となっています。
https://www.efu.jp.net/soft/wg/wg.html 【アーカイブ】
PCサウンド機能を使うことになるのですが、
きっちりテスト信号出すなら廉価品でいいのでDTM入門機とかのオーディオインターフェイスが良さそうです。
HBDの音は、HBCと比べると格の違いを見せつけてくれます。 (使うJFET品種によりますが)HBCは元気な音ですが今にして思えば整理されていない音に感じます。 対して HBD では楽器の分離感もよく、それでいてボーカルの芯がしっかりしつつ音の透明感もアップして聴き入ります。 そもそも回路が違いますが音も全く違いました。
ただし、SOT363-6 (ピッチ0.65mm)について手作業ハンダ実装するのは結構大変であり、モジュールを複数個作っても全然慣れませんでした。 やはりリフローはんだ付けが望ましいのですが、本例HBDはトランジスタが表面裏面に配置されており、 自宅リフロー作業に適した基板構成となっていません。 自宅リフロー製造を目的に片面集約した HBD-RE (後述)を検討中です。
詳細説明は記載中です。
HBD v1の表面実装 BJT を片面に集約して、自宅リフローはんだ製造しやすいように見直したものです。
写真は、青:HBDv2 (HBD-RE)、 緑:HBDv1 です。
リフロー作業にてモジュール基板の大部分を製造できるようになりました。
更にデジタル顕微鏡を使ってチェックやリフローハンダ不備修正作業を行います。
以前と比較すると作業効率がとても上がりました。
計測ツール(Analog Discovery2 + 自作テスト基板 + ソフトFRAplus)で評価してみると進歩しているようにも感じます。
旧HBD v1(グラフ青色)、新HBD v2(グラフ緑色)若干ですがよりフラットになってる感じもします。
回路自体はHBDv1とHBDv2は同じといってもいいのですが、
ダイアモンドバッファのトランジスタをBJT DUAL (NPN-PNP x2)から、シングルBJT (NPNx2 + PNPx2)のローノイズ品に変更しています。
原理的には熱結合したデュアル品が優れているとは思いますが、聴感および許容損失などの面から上回ると判断して見直しました。
プリント基板は表裏2層で配線は済ませていますが、中間2層GNDを足して4層でデザインしています。
ノイズ対処面・熱対処面で効果がうまく出てるとイイのですが、素人の私では評価が難しく。
音の経路のトランジスタを変更してパタン改善したことなどもあり出音は少し変わったと感じます。 それよりなによりモジュール1個作るときの時間が結構短くなったのが嬉しかったですね。
詳細説明は記載中です。
手持ちの 2SK170 / 2SJ74 を利用するための基板です。従来品やHBDとの音質比較用・検証用となります。
自分も昔にヘッドホンアンプとかで使っていた定番回路ですね、今では貴重なローノイズJFETですが何個かストックしていました。
プリント基板は表裏2層です。表面実装コンデンサは予備ですが、使った場合は品種により出音も変わるかもしれません。
計測結果の比較は後述します。
詳細説明は記載中です。
前述バッファ HBD が余りにも複雑なバッファ回路となってしまったため、オペアンプのみの簡素なバッファを比較のため急遽作成しました。
ボルテージフォロアとして使いますが不安定な場合もあるのでプリント基板には複数の調整余地を含めました。
本モジュールはプリアンプ基板等で使いますが、OPBC-Bは出力BJTエミッタフォロアを駆動する場合専用、OPBC-Aはそれ以外の入出力バッファ用です。
基板自体が A・B 両用途で使えるようにしています。
プリント基板は表裏2層で配線は済ませています。ジャンパ・抵抗・ダイオードなど使い方により部品が変わります。
モジュール利用例:入出力バッファ(OPBC-A)、および適用出力バッファ例
モジュール利用例:出力BJTエミッタフォロア駆動専用(OPBC-B)、および適用出力バッファ例
計測ツール(Analog Discovery2 + 自作テスト基板 + ソフトFRAplus)で評価してみます。
まず100kHz超までフラットでありバッファとしてはとりあえず問題無いと感じます。
グラフを拡大します。TI OPA211(グラフ赤色)、TI OPA827(グラフ紫色)はほぼほぼ同じでした。
そして過去の定番 2SK170/2SJ74ソースフォロア(グラフ青色)も悪くないのですね。
自作HDBv2(グラフ緑色)が伸びているのは嬉しいですがコレはTI BUF802等価回路流用なので自分の力では無いです。
計測ツールでは歪率については周波数別と出力別で計測出来ます。
10KHz以上は恐らく計測パラメータ設定が上手くいっていないと思われます。
評価方法も難しいけど計測方法も難しいです。
入力バッファとしてはボルテージフォロア(G=1)安定のオペアンプであればBJT/FETタイプいずれでも大丈夫だと思いますが、 プリアンプの出力バッファ(ボリュームの後に設置)はFET入力タイプが向いているため使い分けは留意する必要があります。
OPBCですがその出音で好き好きはあるかもしれません。とはいえこの簡単さと整った出音はとりあえずの音出しはコレでいいかと思ってしまえるほどです。 更にその上を目指すなら HDB v2 を試してみればイイのではと思ってしまいました。