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本サブプロジェクトは、高電圧で動作する静電型ヘッドホン用アンプ回路を設計・製作します。高電圧アンプの技術検証を目的としています。
本プリント基板は部品として各プロジェクトで利用します。
STAX製イヤースピーカー (コンデンサ型ヘッドフォン)向けに、簡易構成の 静電型ヘッドホン用アンプ 「 自作ドライバ :SSDRV」を試作することにしましたが、
設計すべきものがとても多いためプロジェクトを細分化しました。
SATRI回路技術 ( サトリ回路 ・ SATRIアンプ )の入力増幅段 を生かすこと、および、SATRI回路技術の出力段 を複数種類試すことなどを考慮して、5ブロックに分割することにしました。
本サブプロジェクトではこのうち入力増幅段、出力段について設計検討を行います。
プリント基板のガーバーデータ、詳細部品リストなどの製造資料について公開を予定しています。
お待ちください。
試作版では、入力増幅段(SSDRV input)と出力段(SSDRV output)は基板を分けて積み重ねて利用することとしました。
プリント基板サイズをコンパクトにする目的に加えて、
モジュール化することで上半分・下半分だけ入れ替えることができ部分的な改善作業を行えるようにします。
これまでに入力増幅段 SSDRV INPUT のプリント基板は2種類、出力段 SSDRV output のプリント基板は3種類 設計しています。
どの組合せでも動作しますが最新のものがより改善した回路となっています。
2024年7月時点では、 入力段増幅段 v2「 SSDRV INPUT2」+ 出力段 v3「SSDRV output Type-QGs」の組合せになります。
別ページ「工具について」にまとめました。
『 SSDRV INPUT2 』は高電圧アンプの前半分、入力回路および増幅回路になります。
後述の出力回路 SSDRV output と組み合わせて使います。
作業時期は詳細設計開始 2023年10月、音出し 2024年2月です。前半部のプリント基板は2枚目であり 入力増幅段 v2 です。
以前に製作していた『SSDRV INPUT v1』(設計着手2023年1月、音出し2023年5月)というものがあったのですが、
「外付けプリアンプ」+「入力増幅段」+「出力段」の3回路構成となっていました。
この外付けプリアンプは既存の「XLRバランスプリアンプ v1」を利用していたのですが、
これだと「電圧・電流・電圧・電流・電圧(VIーIVーVIーIV)」変換をすることになります。
簡素化すると次のようなイメージで、前半分がプリアンプ、後ろ半分が高電圧アンプ相当です。
プロジェクト初期段階は仕方ない面もあり、高電圧アンプを実現するためには 手持ちのものを活用して、新しく設計・製作するものを簡素化して難易度を下げることが必要でした。 しかしそれにしても「SSDRV INPUT v1」は音の経路が複雑と言えます。 またプリアンプにて音量調整(※上記回路のR2)していたので、 「入力増幅段」は固定ゲインとなりそこに高抵抗(※上記回路のR4)をつかって電流電圧変換(IV変換)している問題がありました。 高い抵抗(※R4)はS/Nの低下につながるので使わずに済ませたいと思っていました。
本サブプロジェクトでは、回路規模が大きくなりすぎた前半2回路「プリアンプ+入力増幅段」をまとめて「SSDRV INPUT2」として
高電圧アンプの入力増幅段を再設計します。
これなら SATRI回路方式アンプの利点 である 小音量~普段利用音量におけるS/Nを向上させることが可能 となります。
実際に使用する音量において比較的低いIV変換抵抗値 (5kΩ以下)に抑えることができます。
そもそも音の経路をシンプルにして回路を単純化することで音の鮮度が上がるのではないか?とも思いました。
SSDRV INPUT2 全体の写真です。
入力増幅段は(出力段プリント基板の)上に乗せる子基板のため足がついています。
ヒートシンクは 高精度カレントミラー用 の 高耐圧バイポーラトランジスタ が2個ねじ止めされています。
電源電圧±180Vともなると数mAでも損失が大きくなり放熱対処が要るようになります。
プリント基板は2層(表・裏)です。
高電圧と低電圧の回路が同居していますが、高い電圧側はプリント基板のクリアランスも広くなっています。GNDは高電圧と低電圧で分離しています。
低電圧回路と高電圧回路の間にあるレベルシフトBJT(ベース接地)もそこそこ発熱しますが、パターンで放熱するようにしています。
ヒートシンク回りの冷却は勘所が無かったのですが参考技術資料もみつからず通風孔を開けた程度です。
発熱量からするとヒートシンクは十分余裕があるので大丈夫だと思います。
SSDRV INPUT2基板にはオフセット調整用の可変抵抗RV1があります。 入力バッファのオフセット電圧を極小化することでハイブリッドICに入力する信号を適切にします。 オフセット調整は次のように行います。
出力段にはバイアスサーボがあることから出力オフセット自体は常に抑えられているのですが、 とはいえアンプの各段階が想定通り動作するように適切に調整していた方が良いです。
テストをするためには、 「高電圧アンプ:入力増幅段 (SSDRV INPUT)」、「高電圧アンプ:出力段 (SSDRV output)」、 「低電圧電源 (SSDRV PowerSupply2)」、 「高電圧電源 (SSDRV PowerSupply1+PowerSupply3)」 を全てそろえる必要があります。
電源回路のテストがおわったら、とりあえず1回路だけ高電圧アンプ親子基板を接続して先行テストすることとします。
もちろん通電するときには絶縁手袋をして、腕も露出しないように長袖の服を着て行いました。
最小単位でテストを重ねていき、万一壊したときの被害を最小限に抑えることに留意して確認作業を進めます。
とにかく石橋を叩いて渡ることを心がけます。
高電圧アンプの特性や安定性も分かってないので恐る恐る調べていくことにします。
高電圧アンプについては、数秒間、瞬間的に電源オンにして異常ないか確認したり、
入力0V(入力とGNDをショート)にて出力にオフセットが出ていないか安全性を順次確認します。
2枚のプリント基板(入力増幅段 + 出力段)の各箇所、入力増幅段の出力なども想定通りの電圧かを丁寧に見ていきます。
発熱についても重要であり、許容損失考慮して設計しているとはいえ異常発熱が無いかも確認します。
そのあと10分以上通電させて安定性・安全性も確認していきます。
オシロスコープの高電圧プローブで測定した実波形の例です。
波形:左上はXLRバランス入力のHOT/COLDについて2基板の出力をそれぞれ計測したときのもの、
波形:左下は1回路分の入力増幅段と出力段の出口にて計測したときのものですが、
振幅の大小が ±150V ~ ±1.5V であり静電型ヘッドホン用アンプならではの波形だと思います。
このときの設計では最大ボリューム(100kΩ)で243倍なので47dB位ですが、
スタック社製品がおおむね増幅度60dBなのと比べると控え目です。
まあSATRI回路方式なら必要があれば電流電圧変換抵抗(IV抵抗)を大きくすることで対応可能です。
波形:右上は、XLRバランス入力において、ボリュームを更に上げてHOT/COLDの出力サイン波がクリップした様子です。
使用した高電圧の半導体の多くが400V耐圧品ということもあり、電源電圧は±180V以下で設計しておりこれは仕方ありません。
とはいえ±50Vも出せばどのイヤースピーカーでもうるさい位なので、個人的には実用上は問題無いと思っています。
なおボリュームで高ゲイン考慮しているのは小音量ソース(機器・音源)などのために必要があるためです。
波形:右下はXLRバランス入力にて音楽信号を入力した例で、HOT/COLDにて出力できて胸をなでおろしました。
テスト入力信号のサイン波の発生にはPC用の信号発生ソフトを使っています。efuさん作の WaveGene というソフトなのですが、
現在はweb archiveでのみ辛うじてダウンロード可能となっています。
https://www.efu.jp.net/soft/wg/wg.html 【アーカイブ】
PCサウンド機能を使うことになるのですが、 きっちりテスト信号出すなら廉価品でいいのでDTM入門機とかのオーディオインターフェイスが良さそうです。
高電圧アンプ基板においてこのSSDRV INPUT2はプリント基板設計の5枚目でして、
以前の反省点を多数盛り込んで設計することができています。
SSDRV入力増幅段としても2代目の基板であり音質面では大きな不満もないのですが、
回路の安全性や作りやすさなどではまだまだ改善箇所があると認識しています。
『 SSDRV output Type-QG 』は高電圧アンプの後ろ半分、出力回路になります。SATRI回路方式「V6.2バイアスサーボ」を使用しています。
前述の入力増幅回路 SSDRV INPUT と組み合わせて使います。
作業時期は詳細設計開始 2023年1月、プリント基板発注 2023年3月末、音出し 2023年5月です。
後半部のプリント基板は2枚目であり 出力段 v2 です。
GaN-FET (ガリウムナイトライド)の音を聴いてみたい!!
静電型ヘッドホン用アンプつくるなら高耐圧 GaN がピッタリではないか!、正直なところ素子ありきで設計着手しています。
長年、音の評判が良い最新世代の半導体素子を試してみたい!と強く思っていました。
SiC-FET はそこまででもなかったのですが GaN は惹かれました。
ただネット上のGaN自作記事みると誰もが素子を何度も飛ばしているということで相当じゃじゃ馬だと理解しました。
となると比較的扱いやすそうなGaNとしては、Nexperia社
あるいは transphorm社 の
カスコード型 GaN FET(Si-MOSFET & GAN-HEMT)のTO-247・TO-220パッケージ品が現実的と考えました。
その中でCissが比較的小さくドライブしやすそうということ、
とにもかくにも値段も中では一番安いというのもありTP65H150G4PS を採用することとしました。
本サブプロジェクトでは 高電圧アンプの出力段 を設計します。
ここでGaN FETはNch品しかないので出力回路としては 準コンプリメンタリ となります。
なお SiC FET は音響的評判が微妙であるような記事を多数みかけたため比較評価の採用は見送りました。
SSDRV output Type-QG 全体の写真です。
子基板の入力増幅段を取り付けるソケットがあり、親基板・子基板を連結して利用します。
入力増幅段の信号をそのまま出力するバッファ回路になっています。
出力段の基板サイズは統一しているのでプリント基板には比較的余裕があります。
基板裏面にはBIASサーボとDCサーボ、基板表面には高精度電圧リファレンスあたりが少し込み入っている程度です。
GaNアナログアンプはネット上の複数作例において安定性に難あるという記載を見かけており プロジェクトでは慎重に作業を進めていましたが、 (計測や製造の不注意破損を除き)自分もGaN FETを2回飛ばしています。 GaNでは放熱不足の熱暴走のほか、電源オンオフなどに発生したと思われるサージ電圧(?)にて破損した感触もありました。 破損すると上下GaN-FETに異常貫通電流が流れるのかソース抵抗も一緒に損傷します。 電源電圧±180V級だと周辺回路道連れにするため出力基板ごと作り直しになることが数回ありました。
そこで故障率を下げるべく保護回路についても検討しました。
発熱についてはバイアス電流抑える等で対処するとして、
それでも異様に破損しやすいGaN-FETについてはサージ電圧などの過電圧保護(ゲート入力保護)の追加を行いました。
未だに損傷する詳細発生メカニズムは分かっていませんが、下記の保護回路追加により以降は抑止できていると感じています。
GaN FETの出音は大変気に入っていますが、安心して使い続けるにはまだまだ保護回路の改善が必要と思っています。
とはいえまずはこのまま年単位で安定性を見てみたいと考えています。
プリント基板は2層(表・裏)です。高電圧と低電圧の回路が同居していますが、高い電圧側はプリント基板のクリアランスも広くなっています。
GNDは高電圧と低電圧で分離しています。
サーボの引き回しをビア使わずに手配線で頑張ったので面積をとってしまっています。
自動配線ツールおよびビアを駆使してコンパクト配線を検討してもよかったかもしれません。
SATRI V6.2回路 は、上に バイアスサーボ があり基準電圧を調整するとバイアス電流が決まります。
GaNの熱暴走による素子破損は絶対に避ける必要があり、
十分に放熱できていない場合(放熱板を長い間触ってられない熱さの場合)、
可変抵抗RV1を調整してバイアスを低く抑えて発熱低減させます。
悩ましいのは極少量に絞るよりは多少流した方が好ましい出音になることです(スルーレート影響?)。安全に倒しつつも多少流すバイアス塩梅は難しいと思います。
具体的な調整方法としては、電源投入前に調整用の可変抵抗RV1は最小にしておきます(RV1の 1:GND ~ 2:摺動部 を最小値にする)。
テスターで設定電圧TP1を計りつつ徐々に大きくして設計値まで上げつつ、
ヒートシンクが適切に放熱できていることを確認するようにします。
なおバイアス設定値は「ソース抵抗RS71値 × 設定バイアス電流 = TP1設定電圧」で計算しますが、当初はバイアス 5mA ~ 10mA で様子をみることとしました。
※GaNが飛ぶとソース・ドレイン導通して周辺回路もろとも損傷します。 損傷個所を特定できずSSDRV output基板1枚を作り直しとなることがあります。 後悔しないよう高いバイアス電流で攻めず、バイアスを多少抑えた安全側で使用しましょう。
オシロスコープの高電圧プローブにて順次計測を行っていきます。
高電圧アンプについては、数秒間、瞬間的に電源オンにして異常ないか確認したり、
入力0V(入力とGNDをショート)にて出力にオフセットが出ていないか安全性を順次確認します。
その後、基板の各箇所が想定通りの電圧となっているか丁寧に確認していきます。
波形:左はXLRバランス入力のHOT/COLDについて2基板の出力をそれぞれ計測したときのものです。
電圧が高いので最初に計測するときは毎回緊張します。
バイアスサーボ回路によりオフセット電圧は常に抑えられています。
波形:右上は電源オン直後のサーボ挙動(黄色:BIASサーボ、水色:DCサーボ)。波形:右下は電源オフ直後のサーボ挙動(同)です。
オペアンプの電源電圧±18Vに余裕をもって収まっています。
そのあとGaN-FETを放熱板で十分放熱できているかもしっかり確認します。
もし放熱板を手で長い間触っていられない熱さだとGaNが飛ぶかもしれないのでバイアスを下げるようにします。
また10分以上通電させて安定性・安全性も確認していきます。
魅惑の音とでもいいますか、心地よくてずっと聴いていたくなります。 GaN-FET は、なんというか柔らかく温かみある音っぽく感じるも、解像度高めの中高域はクールな透明感ある独特な音がします。
GaN-FETの出音は大変満足しましたが、満足したからこそ新しい回路技術を適用した音を聴いてみたいと強く思うようになりました。
今回の回路技術 V6.2バイアスサーボ よりも新しい技術にて出力段を再設計します(後述 Type-QGs)。
『 SSDRV output Type-QGs 』は高電圧アンプの後ろ半分、出力回路になります。
前述 Type-QG の改善版であり、SATRI回路方式「V11.xバイアスサーボ」を使用しています。
入力増幅回路 SSDRV INPUT と組み合わせて使います。
作業時期は詳細設計開始 2023年7月、音出し 2023年9月です。
後半部のプリント基板は3枚目であり 出力段 v3 です。
GaN-FET出力段「SSDRV output Type-QG」の出音は大変満足しました。
柔らかく温かみある音っぽく感じるも解像度高めの中高域は透明感ある独特の音がします。魅惑の音とでもいいますか、心地よくてずっと聴いていたくなります。
しかし使用しているSATRI回路技術はV6.2(BIASサーボ + DCサーボ)というもので、
出力段の精度向上のためサーボ回路にてバイアスを固定化しますが2003年の古い技術でした。
その後2009年にV11.x (V11.1~V11.4)という後継バイアスサーボ回路が出ており、
更なる高精度化を狙って設計された回路でした。
更なる音質向上につながるのならと、静電型ヘッドホン用アンプ出力段としてV11.x回路の検討だけは細々続けていました。
具体的にはLTspiceを用いてシミュレーションを行っていました。
検討当初は逆に歪率が大きく悪化してしまいましたが、色々検討を重ねて良好な結果を得ることができました。
本サブプロジェクトでは、V11.x回路を元にしたGaN-FET準コンプリメンタリ出力段を改めて設計することとします。
SSDRV output Type-QGs 全体の写真です。
子基板の入力増幅段を取り付けるソケットがあり、親基板・子基板を連結して利用します。
入力増幅段の信号をそのまま出力するバッファ回路になっています。
出力用GaN-FET、定電流源のBJT、バイアスサーボ OPAMPx2、LM334 など結構苦労して詰め込んだプリント基板になっています。
V11.x バイアスサーボ回路 では定電流負荷でバイアスを引いており、 出力(ソース抵抗)には音声信号のみとしてバイアス電流を流さないことで精度向上を狙った回路になっています。 V11.1等 では SATRI V9回路方式 の 高精度カレントミラー が使われているのですが、定電流源として用いると高精度電流コピーが逆効果のようでした。 結果に違和感がありLTspiceで1kHz~96kHzのサイン波を入力して隅々まで調べると分かってきました。
10kHzサイン波入力のときの出力電圧FFTみるとV11.xと比べて、(2020年の最新版)抵抗負荷バイアスサーボ回路方式 の方が優れているように感じます。
なおV6.2は前製作「SSDRV output Type-QG」の回路(バイアスサーボ + DCサーボ)です。
抵抗負荷バイアスサーボ は後述「SSDRV output Type-CF」の回路です。
20kHzサイン波入力のときの出力電圧FFTみるとV11.xは顕著に更に悪くなっていますが、今回設計した簡素化した電流源(ウイルソンカレントミラー利用)だと
(抵抗負荷バイアスサーボと)いい勝負だと思いますし、
バイポーラトランジスタ利用もあって出力インピーダンスが高いよりよい電流源負荷にすることができています。
保護回路は「SSDRV output Type-QG」と同様です。
GaN-FET保護(ゲート保護)、電源異常電圧保護 を行っています。
プリント基板は2層(表・裏)です。高電圧と低電圧の回路が同居していますが、高い電圧側はプリント基板のクリアランスも広くなっています。
GNDは高電圧と低電圧で分離しています。
かなり無理して詰め込んだので全体的に余裕がありません。出力付近のGNDベタもよろしくなく反省点が多いです。
オシロスコープの高電圧プローブにて順次計測を行っていきます。
高電圧アンプについては、数秒間、瞬間的に電源オンにして異常ないか確認したり、
入力0V(入力とGNDをショート)にて出力にオフセットが出ていないか安全性を順次確認します。
その後、基板の各箇所が想定通りの電圧となっているか丁寧に確認していきます。
波形:左上および波形:左下は、XLRバランス入力のHOT/COLDについて2基板の出力をそれぞれ計測したときのものです。
振幅の大小が ±160V ~ ±0.8V となっており静電型ヘッドホン用アンプならではの波形です。
バイアスサーボ回路によりオフセット電圧は常に抑えられています。
波形:右上は電源オン直後のBIASサーボ挙動(黄色:上側、水色:下側)。波形:右下は電源オフ直後のBIASサーボ挙動(同)です。
オペアンプの電源電圧±18Vに余裕をもって収まっています。
前回Type-QG と 今回Type-QGsとはサーボ方式が細々異なるので、サーボのかかり方も異なります。
あと発熱量が2倍となりかなり凄いので放熱板で十分放熱できているか、長時間通電しても放熱は問題無いか念を入れて確認します。
もし放熱板を手で長い間触っていられない熱さだとGaNが飛ぶかもしれません。素直にバイアスを減らしましょう。
高電圧アンプ基板におけるSSDRV出力段としても3代目の基板であり、
以前の反省点を多数盛り込んで設計することができています。
改善箇所としては回路の安全性、作りやすさはまだまだ検討余地があります。
またケースに収めるときは発熱対策について十分な検討が必要だと思っています。
『 SSDRV output Type-CF 』は高電圧アンプの後ろ半分、出力回路になります。SATRI回路方式「抵抗負荷バイアスサーボ」を使用します。
前述の入力増幅回路 SSDRV INPUT と組み合わせて使います。
作業時期は詳細設計開始 2023年1月、プリント基板発注 2023年3月末、音出し 2023年5月です。
実は「output Type-QG」は出力段v2基板、 「output Type-QGs」は出力段v3基板であり、 その前にこの「output Type-CF」 出力段v1基板がありました。 一番最初に設計した出力段v1は Pch MOSFET と Nch MOSFET を組み合わせたコンプリメンタリ仕様のものです。 とはいえ市場にはペアとして売られている高耐圧Pch MOSFETはなさそうなので、同一メーカーの近い製品を組み合わせて作ることになります。
ここで出力素子Pch MOSFETの選択肢が現行品だと殆どありませんでした。
vishay siliconix社 だと IRFU310PBF/IRFU9310PBF。
onsemi社 だと FQP5N60C/FQP3P50 および後継品でしょうか。
個人的には(旧)三洋半導体 の希少な 2SK2403/2SJ458 を持っていたのですが、
ディスコン品で新規設計するのは極力避けたかったため使用していません。
本サブプロジェクトでは、IRFU310PBF/IRFU9310PBF の Pch/Nch MOSFET をつかった出力段を設計することとしていました。
初めて音が出た瞬間は感動しましたが、しかし早々にお蔵入りしてしまいました。 ぶっちゃけて言うと眠い音といいますか、出音が自分の好みではありませんでした。 GaN-FET (output Type-QG(Type-QGs))の透明感あるクリアな響きを聞いてしまうとMOSFETを選択する気になりませんでした。
SSDRV output Type-CF 全体の写真です。
写真左、子基板の入力増幅段を取り付けるソケットがあり、親基板・子基板を連結して利用します。
入力増幅段の信号をそのまま出力するバッファ回路になっています。
基板裏面に(バイアスサーボ)負荷抵抗のパワーレジスタ(5W(7W))が取り付けられています。
写真右は手持ちのディスコン半導体。市場在庫も枯渇したものは新規設計では控えるべきということで採用見送りました。
プリント基板は2層(表・裏)です。高電圧と低電圧の回路が同居していますが、高い電圧側はプリント基板のクリアランスも広くなっています。
GNDは高電圧と低電圧で分離しています。
出力段としてはプリント基板1枚目の設計でもあり反省点が複数あります。
負荷抵抗を裏面に配置したのは放熱面で問題がありました(ヒートシンクと基板に挟まれて放熱しにくくなっています)。
選定したMOSFETが自分の好みに合わなかったのが主因だとおもっていますが、 他のMOSFETを試すよりはGaN-FET (output Type-QG)の設計製造・検証を優先したため、本サブプロジェクトは作業終了としてしまいました。
ただ出力段では唯一、出力素子が損傷していません(作業ミス除く)。やはりMOS-FETで作ると頑丈に作れるのだと感じました。
2024年11月下旬、静電型ヘッドホン用アンプの運用終了して技術検証作業は終了しました。本サブプロジェクトも終了します。
正直に言えばGaN運用断念しました。素人の自分にはGaN-FETアナログアンプの安定稼働は無理だったようです。
出力段「SSDRV output Type-QGs」は14ヶ月目で再破損しました (「SSDRV output Type-QG」含めると18ヶ月のGaN運用)。 新しい保護回路も効果不十分だったのかもしれませんし他の要因かもしれません。 故障基板を再作成せず断念するのは、故障の原因究明をすることが出来ず再破損否定できない為です。
自作ドライバは諦めていませんが、とはいえ稚拙な初期設計に基づいた複雑基板というのは再製作作業も結構大変なこともあり、 大幅に簡素化しつつ回路も抜本的に見直した部品サブプロジェクトを新たに始めたいと思います。
GaN-FET独特の透明感あるクリアな響き大好きだったよ...